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携帯を耳にあて、沙夜に電話をかけている様子だ。
「あ、出た!
沙夜ー。どこにいるの?早く戻ってきなよー」
竹村の持っている携帯からは向こうの声は聞こえてこない。
と、いうより沙夜が喋っていないのかもしれないが。
「水野くんがさー」
「あー、うっせ。廉、竹村黙らせろっ!」
いきなり竹村が俺の名前を出すから、焦った。
竹村の手から携帯を奪い取る。
「何でよーっ!ほんとのこと言っちゃ悪いのー?」
「まあまあ、杏ちゃん。そういうことは黙っといてあげなきゃ」
「廉くんが言うなら…」
怒ったような表情の竹村を廉がなだめる。
2人のやりとりを見て俺は小さくため息をついた。
竹村の態度はあからさますぎる。
分かりやすいって。
そんなことを考えながら。
「竹村、余計なこと言うなよ」
「どうしよっかなあ」
苛っ。
むかつくな、此奴は。
そうは思っても本気で嫌いではない。
沙夜の友達だし、こういう奴だということはもう十分分かっている。
『…もしもし?』
「沙夜?あー、とりあえず教室戻ってこい。じゃ」
いつもの沙夜の声が聞こえてくる。
俺から携帯を取り返そうとする竹村を制して、俺は用件だけ伝えて電話をすぐに切った。
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