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誰だっけ。
思い出そうとはしたが、嫌な記憶だと感じた。
この声に、あまり良い気がしない。
「しょーうーやーくんっ」
うざい、そう思って俺は窓の外から再び、教室へと意識を戻す。
「無視していいのー?」
いつの間にか戻ってきていた廉が言った。
「沙夜ちゃんは…と、幼なじみのとこかー」
「………」
俺は廉の言葉に返事をしない。
たった今、あのメイド姿の女が誰だったか思い出してしまった。
嫌な記憶が蘇り、気分が落ちる。
「坂井由梨亜も懲りないねー」
「ほっとけ」
廉は笑顔でカーテンを閉めた。
教室のあちこちからカーテンを閉めたことに対し、多少の文句が出たが俺の姿を見ると全員黙り込む。
「なあ、廉」
「ん?」
「文化祭終わったら沙夜と、話してみるわ」
廉の顔も見ずに、クラスメートたちを眺めて言った。
「まさか、告白?!」
少し大げさに廉は返事をする。
若干、いつものように場を盛り上げるような、そんな言い方をしていた。
「…それもありだよな」
「え、将弥?」
ぽつりと言った俺の言葉が聞こえたのか、聞こえていないのか。
廉は俺の顔をのぞき込んでくる。
俺はそれ以上、何も言わなかった。
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