出会い .

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「宮井 沙夜」 ぽつりと、聞き取りづらいくらいの 声でつぶやいた。 それから、俺たちには興味なさそうに 読んでいたらしい本に 視線をおとす。 …宮井 沙夜。 長い髪を結ばずにおろしたまま、日にあたって全体的に明るい髪色。 俺は廉と竹村って奴の話を 聞きながらぼーっとしていた。 「…ケータイ」 「は?」 「鳴ってるよ、ケータイ」 沙夜って奴は俺の机の上にあった ケータイを指差して言う。 「あ?あぁ。サンキュ」 …なんか、変な奴。 そんなことを思いながらケータイを開いた。 着信相手を見て、俺はケータイを閉じる。 「出ないの?」 「めんどくせーから」 「ふーん」 また、鳴りだしたケータイを切ってかばんに投げ入れる。 着信は進級する少し前に知り合ったしつこい女から。 かなり迷惑してんだよね、正直。 「なに、気になる?」 にこっと笑顔を作って言ってみる。 「別に」 俺のことを見もせずに 本をじっと見ながら答えられた。
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