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一郎が東京に帰ってから数日後、野丸高校はついに夏休みに突入した。
太郎が久しぶりに訪れた平穏を満喫していたある日、充電スタンドに置いているケータイから、なんとも普通な着信音が鳴った。
「もしもし?」
「オッス!俺だよ俺!ぶははっ!!」
「くだらねー詐欺の真似事すんなよ次郎。笑い声でバレバレなんだよ」
太郎は電話越しに次郎にそうつっこんだ。
「まぁ今のは冗談だよ!んな事より暇だろ?海行こうぜ!」
「嫌だ!!!」
太郎は思わず、大声でそう言ってしまった。
「いっ、いきなり大声出すなよ太郎!」
「だってお前、俺達去年漂流したんだぞ?それなのに、今年も海に行きたいっていうお前の考えが、俺にはわかんねぇわ」
太郎の言う通り、太郎達は去年マグロに引っ張られた木実を追いかけて、漂流したのだ。
しかも、無人島に流された上に夏休みのほとんどを潰されたという苦い思い出がある。
「でもよぉ太郎、今年は秋野のビキニが見れるかも知んないぜ?」
「ビッ!ばっ、馬鹿次郎!!木実ちゃんはそんなの着ねぇよ!!」
太郎が顔を真っ赤にしてそう反論していたその時、
ピンポーン
玄関のチャイムがなった。
「誰か来たみたいだ。今家に俺しかいないから俺が出なきゃなんないんだ。だからもう電話切るぞ?」
「まっ、待てよ太郎!まだ話は終わってな…」
ブツッ
太郎は次郎の意見を無視して、普通に電話を切った。
そして、チャイムの鳴った玄関へと向かった。
「どなたですか~?」
そう言いながら太郎が扉を開けると、そこには日頃からよく見ている黒髪のストレートの女の子が立っていた。
「こっ、木実ちゃん!?」
太郎は木実の突然の訪問と、先程迂濶にも木実のビキニ姿を想像してしまった事もあって、顔を真っ赤にしてしまった。
「突然来ちゃってゴメンね太郎君♪今ちょっと時間いいかな?」
「もっ、勿論いいよ!どうぞ上がって!今誰もいないから!」
そう言って太郎は、木実を家へと招き入れた。
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