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次郎の告白の事件から早くも数週間が経った。
そんなある日、太郎達はいつものように昼飯を屋上で食べていた。
ただ、いつもと少し違っていたのは、木実と美花がいない事だ。
「なぁ太郎、なんで秋野と美花はいないんだっけ?」
「さっきも言っただろ力蔵。木実ちゃんは美術部の展示会で、神崎は合気道部の昇段試験なんだってよ」
「しかし男のみの昼飯は、なんか華がありませんね~」
「何言ってんだよ天馬!澪ちゃんがいるじゃねーか!」
そう言って次郎が肩に回してきた手を、澪は無表情で弾いた。
澪は事件以来、ほぼ毎日一緒に昼飯を食べている。
とは言っても、毎日次郎が無理矢理連れてきているのだが。
「次郎、いい加減澪が男だって事を受け入れろよ」
「うるせー太郎!どう思おうと俺の勝手だろ!」
「こっちはかなり迷惑なんスけどね」
「んな事言わないでよ澪ちゃ~ん」
そう言って、次郎は悲しげに肩を落とした。
そんな会話をしていると、扉が開き見覚えのある人が屋上に現れた。
「よう!我が弟と、その仲間達!」
そう言って一郎が手を振りながら近づいて来た。
「何しに来たんだよ兄貴!」
「飯塚先生って、次郎先輩の兄なんスか?」
澪が少し驚いた表情で尋ねた。
「まぁ、一応ね」
「おぉ次郎!お前いつの間にそんな可愛い彼女を!?」
「違いますよ先生。澪は男ですよ」
天馬が溜め息をつきながら一郎に言った。
「男なの!?そんな……次郎お前、そっちの世界に入ってしまったのか……」
そう言って一郎は、ショックでワナワナと震えた。
「やっぱ兄弟っスね」
「一緒にしないでよ澪ちゃん……」
「ハハハ!先生おもしれーな!先生も一緒にメシ食おうぜ!」
そう言って力蔵は、勘違いのショックから立ち直っていない一郎の背中を、バシバシと叩いた。
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