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「私は・・・」
薄暗い部屋で、オッドは聖なる防具に語りかける。
「今、初めて幸せだ。闇を食らう血にまみれても。帰りを、待つ人がいる。頼る精霊もいる。初めて孤独じゃないんだ。」
かすかならオッドの呟き。
「それを守りたい。三日月や、エデンやキリエや、教会なんて関係なく。」
オッドは初めて、自分の意思で戦おうとしている。
「守りたい。それは、わがままか?」
静かな時が流れ、ゆっくり、聖防具は、光を宿す。
「感謝します。師匠。」
かつて、オッドに闇と対峙する力を、技を、すべてを教えた人物。
その人物の血の混ざった聖防具。
それは、まだ微かに意思をもち、オッドに協力する事を示した。
「教会な全てが正しいことばかりではありません。時に、自分の意思で行動しなさい。」
よみがえる師匠の言葉。
師匠を殺めたのは、闇でもなく、エデンでもなく。
・・・役目は終わったと決めた教会。
「守るべき者を、守る力をもっていなくても、守ろうとする気持ちが、全てを覆しますよ。」
最後の師匠の言葉。
笑って死を受け入れていた。
「私は・・・師匠も守りたかったのです。」
静かに、オッドは聖なる防具に語りかけた。
今宵は、静かな嵐がくる。
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