キリエ

4/10
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「私は・・・」 薄暗い部屋で、オッドは聖なる防具に語りかける。 「今、初めて幸せだ。闇を食らう血にまみれても。帰りを、待つ人がいる。頼る精霊もいる。初めて孤独じゃないんだ。」 かすかならオッドの呟き。 「それを守りたい。三日月や、エデンやキリエや、教会なんて関係なく。」 オッドは初めて、自分の意思で戦おうとしている。 「守りたい。それは、わがままか?」 静かな時が流れ、ゆっくり、聖防具は、光を宿す。 「感謝します。師匠。」 かつて、オッドに闇と対峙する力を、技を、すべてを教えた人物。 その人物の血の混ざった聖防具。 それは、まだ微かに意思をもち、オッドに協力する事を示した。 「教会な全てが正しいことばかりではありません。時に、自分の意思で行動しなさい。」 よみがえる師匠の言葉。 師匠を殺めたのは、闇でもなく、エデンでもなく。 ・・・役目は終わったと決めた教会。 「守るべき者を、守る力をもっていなくても、守ろうとする気持ちが、全てを覆しますよ。」 最後の師匠の言葉。 笑って死を受け入れていた。 「私は・・・師匠も守りたかったのです。」 静かに、オッドは聖なる防具に語りかけた。 今宵は、静かな嵐がくる。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!