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レンは10メートルほど先に放り投げてあった鞄とブレザーを掴み、歩いてそこへ向かう私にレンもまた駆け寄る。
「あちぃよなー。」
ブレザーについた砂埃を軽く払い、レンはそれを鞄に乱雑に放り込んだ。
『レンは凄いね、暑いのに元気だし。』
「真水が体弱いだけー。」
『それもあるけどレンが元気すぎるんだもん。』
私が少し頬を膨らます仕草をしてみれば、レンは"ごめんごめん"と悪戯に笑った。
レンの笑顔は人を簡単に惹き付けて、そして狂わす。
校舎の方へ向かって歩き出したレンに向かって、男子たちはバイバイと手を振った。
レンも振り返って手を振る。
レンはみんなに愛されている。
凄く幸せそう。
「どっか寄ってこうか。」
バッ、と本当に一瞬の出来事。
私の宙ぶらりんだったレン側の片方の手(レンは私の右側にいるから右手)を奪われた。
ドクン。
何があったのか解らなくて頭はパニック。
でもすぐ気付く。
レンは私の手を握ってる。
『う、ん。』
上手く喋れない。
ドキドキする。
手、と言われてから差し出すことがいつものことだったけれど、自然に手を奪われたのは初めてだったから。
「また照れてる?」
覗き込むレンが眩しくて見えない。
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