何故

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「…って真水?」 聞いてた?と私を覗き込むレンにハッと我に返った。 今さっき私は脳内でレンに爪を一本一本ペンチで剥がされ、血塗れの桜色の肉が見えた指先を丹念に、綺麗なその舌で舐められていたところであった。 『え、あ、ぼーっとしてた。』 そう答えた私にレンは苦笑した。 「大事なこと話してたのにー。」 『ごめんごめん、』 放課後、テスト勉強と称した自由時間をクラスの大半が教室で行う中、私とレンも机を二つくっつけて参考書なんか開きながらいつもの調子で話していた。 なるべく頭の中で何かする時は、今自分の行っている活動に支障をきたさないように細心の注意を払っているのだが時々それが追い付かなくなる瞬間もある。 私は周囲の人間より少しばかり頭の出来が良く(否、周りのレベルが低すぎる)、二つも三つも、誰かと会話しながら頭の中で考え事を成功させることが出来る。 しかしまだ20年と生きていない小娘だ。 有名私立の幼稚園に通い、母親が血眼でお受験お受験と騒ぎ、順調に私立の小中学校を卒業、今は超進学校に通い果ては医者か弁護士かといったエリート人生を歩んで来たわけでも、僅か十代にしてノーベル賞並みの発明をしてしまうような天才でもない。 普通の高校生だ。 ボロくらい出る。
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