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『もう一回話して。』
今はテストだ云々で疲れているに違いない。
こんな時は現実の活動に集中するべきだと思った。
「あー、うん。」
レンはしょうがないなぁと笑ってから手に持っていたペンをくるくると回しながら言った。
「テスト終わってから休みに俺の家で遊ばない?って話。」
一瞬心臓が飛び跳ねた。
よくもまぁ目をかっぴらいて素っ頓狂な声を出さずにいられたものだと自分を誉めたい。
なるほど、"大事な話"であった。
レンの家に行くのは初めてだ。
噂に聞くと立派な家だという。
家に行く、家に行くのだ。
それはレンがどういったことを意図して言ったことなんだろう。
深い意味などなく、ただ単に家でのんびりしたいのか。
いや。それとも。やはり。
僅か一秒に満たない時間の中で私は様々なことを考えた。
『行っても良いの?』
結果、私は平然を装い、ついでに無知さも装った。
くるくるくるくる。
ペンはレンの指の中で回り続けている。
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