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「当たり前じゃん。真水は嫌?」
『…別に嫌じゃないけど。』
ここで反応を見なければ。
目の前にある現実に神経を集中させる。
…レンは少しばかり間を置いてから、口角を上げた。
「うん。じゃあ土曜日で良い?」
嗚呼神様!
恋愛には酷くウブで(体は)無垢で鈍く臆病な私だけれども、ほんの少し周りより頭が賢く出来ているお陰かたった今の今、レンの意図が読めました。
『土曜日ね、解った。』
真正面に座るレンは楽しそうに笑っている。
ペンは先ほどよりも速い速度でくるくるくるくるくるくるくるくる回っていた。
「これでテストがなきゃすげー良かったのになぁ。」
顎を机に乗せる形でレンは机にダレた。
『ご褒美ってことで良いんじゃない?』
私の言葉にレンはけらけら笑った。
高ぶりなのか何なのか解らないけれど、それはそれは楽しそうに。
「じゃ、テスト頑張らないと。」
少し頭を上げてレンの長い腕がすっと伸びて、私の髪を撫でた。
私はただレンを見つめてゆっくり瞬きすることしか出来なくなる。
レンは首を傾げて優しく笑ってみせた。
サラサラと、右手は私の左耳辺りの髪を撫でる。
言葉がなくても何かが伝わるような、私とレンの周りには誰もいないような、このまま時が止まり動かなくなるような、そんなような、そんなような。
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