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亮「俺の友人も、ドイツに滞在していたんだ。知ってるか?」
信「おいおい、亮太郎。」
ハァとため息をつき、信二さんは亮太郎を見た。
座布団を俺たちの近くに敷き、膝を折って座った。
俺は、この座り方を知っているぞ。
父親から学んだが、慣れるのに時間がかかった座り方、「正座」だ。
父親は、正座のし過ぎで足が短くなったと嘆いていたが、どうみても胴より足の方が長がった。
そんな親に、一時期「コイツ、ばかか?」と思ったのは伏せておこう。
信二さんが正座に至るまでの動作は、とても美しかった。
いや、美しかったんじゃない。
凛として、心を奪われた。
日本人だからこそ魅せる動作であると、俺は思った。
信「多分、拓斗のことだと思うが、名前を言わなければ誠也が分かるはずもないだろう。」
背筋を曲げることなく、信二さんは凛と座り、亮太郎に言った。
正直、格好いいです、信二さん。
俺も、凛とした立ち振舞いが出来るようになりたい。
信「誠也?」
誠「<うわっ!!!驚かせないでください!!>」
亮「えっ?何?」
誠「あっ・・・。」
俺は思わず自分の口を塞いだ。
自分の世界に入っていたあまり、現実に戻された瞬間、ドイツ語で話してしまった。
俺は、シュンと小さくなった。
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