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父「<誠也、分かってくれ。>」
母「<ゴメンね、誠也。>」
俺は両親に握られた右手を見た。
けど、口は塞がったまま。
何一つ、両親に言う言葉が見つからなかったからだ。
父「<日本で俺の兄弟が学校を経営している。そこに行くんだぞ。>」
父はドイツ語でそう言って、俺の右手を強く握った。
ピッピッと近くにある機械が、止まる事なく俺の心臓の脈を外に伝えている。
白いベッドに白いカーテン。
俺は病院で、横になっていた。
母「<あなたが生き延びるには、これしかないの。>」
母はそう言って、一筋の涙を流した。
白い部屋に、黒髪の東邦人が三人。
もちろん、両親はドイツ語ペラペラの日本人。
俺はその二人から生まれた子。
髪は黒だし、瞳も黒だ。
けど、今日から違う。
右目は黒、左目は灰色。
誠「<失明か・・・・。>」
俺は左目をさすった。
左目を失明。
眼帯がそれを物語っていた。
誠「<俺、日本に行くよ。>」
俺の口から、決心の言葉が出た。
それを聞いた両親は、黙って俺を抱いた。
誠「<今までありがとう、父さん、母さん。>」
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