第一章

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調理室。 ここが使われる目的としての主な理由は、調理部が放課後の活動に使うか、もしくは選択科目の家庭科で使われるかだ。 現在は後者の理由で使用されており、調理室では、2学年の各クラスの女子達が担当教師から説明を受けている。 「ふむ、今日作るのはクッキーか」 「理恵、あんたは自由に作ったらダメよ。見本通りに作りなさい」 「えぇ~っ、何で?」 里美、理恵、春香の3人は、揃って家庭科を選択している。 基本的に座る机は適当なので、今は3人一緒に集まって話し込んでいる。 3人が家庭科を選択した理由は、勿論――― 「私も慎司君にオリジナルクッキー食べて欲しい~ッ!」 「アンタの天然スキルは危険なのよ。慎司に変な物なんて食べさせられないわ」 「なあ、私は渡せなくても構わないから、慎司がクッキー食べてる姿を遠くから撮らせてくれないか?」 取りあえず、軽く犯罪チックな事を言っている春香を無視して、里美は理恵に釘をさす。 「分かった? ちゃんと材料の表示を確認するのよ? まずは、その段階に慣れなさい」 「む~、…は~い」 理恵は嫌々ながらも了承したので、少し心配が残るが、里美は一安心した。「で、私は撮って良いのか?」 「構わないわよ、慎司のアンタに対する印象が薄れるだけだから」 「なに!? なら作る!」 「はい、よろしい」 里美もそれなりに異常な部類の人間に入るのだが、このやり取りを見る限りでは、一番の常識人と錯覚してしまう。
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