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教師の指示でクッキー作りが開始され、調理室には甘い臭いが充満する。
(むう…、やはりお菓子作りは難しいな)
普通の食事は作れるが、お菓子作りは初心者も同然の春香。
材料を混ぜる姿も、どこかぎこちない。
(どれ、理恵の進み具合は―――)
隣で調理している理恵が気になり、春香は軽く覗き込んでみる。
そこで見たものに、驚愕した。
(んなっ?! 砂糖が大盛りじゃないか!)
春香が見たのは、理恵が、ボウルに大量の砂糖を投入する瞬間。
それをした張本人は、ニコニコ笑顔で全く気にする様子が無い。
理恵がかき混ぜているボウルの中には、溶け切らずに残っている砂糖の塊が、チラチラと見えている。
(あれ、砂糖ですぐに焦げるんじゃ? …いや、それ以前に甘過ぎるぞ。
確かに、里美が材料を間違えないよう注意していたが…)
先刻のやり取りを思い出し、春香は僅かにため息を吐いた。
(分量も注意しないとダメなのか…?本当の意味で一から教える必要があるとは…。
恐るべきかな、天然スキル)
ともあれ、この事態を放置するのはマズい。
春香は、頼りである里美を呼ぼうと思ったが―――
(アレじゃあ、難しいか…)
春香の視線の先には、たくさん女子に囲まれている里美の姿がある。
里美はオールマイティに料理が得意なので、他の女子達に助言を求められているのだ。
(素人の私では、対処の仕方も分からんしな…。慎司、ご愁傷様だ)
早くに考えを断念した春香だが、慎司のことを心配していないワケではない。
ただ、慎司の苦悶の表情を撮りたいという欲望が、彼女の中で高まっただけだ。
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