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時間はさかのぼり早朝5時。
慎司達が住む住宅街から、歩いて1時間程かかかる場所。
そこには、まるで周囲の家をバカにするかのように、広大な敷地の中に建てられている日本古来の屋敷がある。
大きさに相応して部屋の数も多く、ここの家系の人間だけではなく、彼らの世話をしている使用人も数人住んでいるのだ。
そんな屋敷の中には、一つだけ異常と呼べる部屋が存在する。
その異常な部屋の中に隙間無く貼られた写真、そこに写っているのは全て同じ男の顔―――慎司だ。
この部屋は慎司の写真と布団だけで構成されている、と言われても納得できる程のインパクト。
そんなトラウマでも覚えかねない部屋で安眠している女性は、木戸春香(キド ハルカ)。
こんな狂気染みた飾り付けを部屋に施したのは、勿論のこと彼女だ。
自分の住んでいる家にこんな部屋があれば、住人の誰かが悲鳴の一つでも上げて即座にバレそうなもの。
しかし、春香がこの部屋に写真を貼り始めて数年、未だに見つかったことはない。
何故なら、この部屋には『私の寝室につき絶対侵入禁止!』と超達筆で書かれた紙が、ドア一面に貼り付けてあるからだ。
加えて鍵が3つも掛けてあるとなれば、誰でも入る気が失せるだろう。
そんな部屋の中、余裕で爆睡できている春香も異常なのだろうが、それに反して、彼女の体内時計は恐ろしく正確だ。
普段春香が起きる時間である早朝5時、今日も時間ピッタリに彼女は起床した。
春香が目を開くと、眼前に広がるは慎司の顔、顔、顔―――。
「あぁ…、慎司」
春香はそんな光景に身体が熱くなり始めたが、どうにか意識を保って我慢する。
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