第一章

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そもそも、何故春香は、慎司の写真を貼りまくるという変態行為を行っているのか。 理由は簡単。 ―――完全なる趣味だ。 ただ『慎司に囲まれていたい』という願望を叶えただけの、本当に素直な行動。 そんな本能に従う女の子である春香は、こんなんでも高校で生徒会長を務めている。 当然だが、学校の生徒達に変態な姿は見せていない。 部活は剣道部と茶道部に所属しており、普段は剣道部の朝練のためこの時間に起床している。 しかし、時間は変わらないが、今日は生徒会での会議があるため起床したのだ。 春香は大体の準備を済ませた後、学校へと向かう。 彼女の頭の中にある考えは、生徒会での会議内容ではなく――― (今日は、どうやって慎司を盗撮するか…) 春香にとっては、慎司が全てにおいての最優先事項。 生徒会での仕事など、片手間で済ます程度の価値でしかないのだ。 (3) いつも通り3人での登校を終えた慎司は、二人と別れた後、自分の教室へと入る。 「慎司、おはよー」 「…はよー」 数人の友人と挨拶を交わしつつ自分の席まで歩いていた慎司だが、途中から違和感を感じていた。 慎司の目には、本来座っているハズのない男が、自身の腕を枕にして眠っている姿が。 「………」 少しばかり思考を巡らせた慎司は、一つの結論を行動に移す。 「…ぃいだだだっ?! 重いってコレ誰が乗ってんだよオイ!? イダイイダイッ!! 頭が潰れるいや凹みますだから止めて下さいお願いしますーーッ!!」 くぐもった男の低い声は響きにくく、それを男の頭上で聞いている慎司はうまく聞き取れなかった。 そう、頭上。 慎司が迷った末に起こした行動は、『座る場所が無いからコイツの頭で代用しちゃえっ! キャハッ!』というものだ。 しっかり成長した高校生男子が、自らの頭に体重を預けているのだ。 この男子が苦痛を訴えるのは、当然だと言える。
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