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「いやホント、マジで。あのまま続けられてたら、俺は脳ミソぶちまけてたね」
「……手加減はした」
「いや、もしかしたら手遅れなんじゃね? なあ、俺の頭どうなってる?」
「……腐って―――」
「あーヤバイ、今立ちくらみした。もうこれイッてるね、むしろ煎ってるね俺の頭」
「………」
噛み合ってるのか、そうでないのか分からない会話を繰り広げているのは、慎司と加納剛(カノウ ツヨシ)。
加納剛は慎司が高校に入学して最初にできた友達で、それからよく行動を共にしている。
こんな目茶苦茶な会話をしているのだが、お互いに波長が合うらしく、それなりに楽しい友人関係を築いている。
「そうだ。今の状態で告白したら、里美さんはオッケーしてくれるかもな? いつもと違う俺にキュンッ、みたいな?」
「……変化に気付かれないかもな」
「絶対気付くね、脳ミソぶちまけてんだぜ?」
「……そのまま中身変えちまえよ」
今の会話から分かる通り、加納剛は葉山里美へ明らかな好意を持っている。
理由は一目惚れ。
剛が葉山家へ遊びに行った際、慎司の部屋へ紅茶とケーキを持ってきた里美にズッキュンときたのだ。
それからは、里美と会う度に猛アタックを繰り返す剛だが、全てがキッパリと拒絶されている。
「アレだよ、ギャップ萌えってやつ?」
「……ギャップの意味がちげーし」
「あー、あの唇にキスしてみてーなー」
「……へぇ」
一般常識として、自分が姉である里美とキスしているとは言わない慎司。
だが、その心には確かな優越感が存在していた。
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