第一章

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「いやホント、マジで。あのまま続けられてたら、俺は脳ミソぶちまけてたね」 「……手加減はした」 「いや、もしかしたら手遅れなんじゃね? なあ、俺の頭どうなってる?」 「……腐って―――」 「あーヤバイ、今立ちくらみした。もうこれイッてるね、むしろ煎ってるね俺の頭」 「………」 噛み合ってるのか、そうでないのか分からない会話を繰り広げているのは、慎司と加納剛(カノウ ツヨシ)。 加納剛は慎司が高校に入学して最初にできた友達で、それからよく行動を共にしている。 こんな目茶苦茶な会話をしているのだが、お互いに波長が合うらしく、それなりに楽しい友人関係を築いている。 「そうだ。今の状態で告白したら、里美さんはオッケーしてくれるかもな? いつもと違う俺にキュンッ、みたいな?」 「……変化に気付かれないかもな」 「絶対気付くね、脳ミソぶちまけてんだぜ?」 「……そのまま中身変えちまえよ」 今の会話から分かる通り、加納剛は葉山里美へ明らかな好意を持っている。 理由は一目惚れ。 剛が葉山家へ遊びに行った際、慎司の部屋へ紅茶とケーキを持ってきた里美にズッキュンときたのだ。 それからは、里美と会う度に猛アタックを繰り返す剛だが、全てがキッパリと拒絶されている。 「アレだよ、ギャップ萌えってやつ?」 「……ギャップの意味がちげーし」 「あー、あの唇にキスしてみてーなー」 「……へぇ」 一般常識として、自分が姉である里美とキスしているとは言わない慎司。 だが、その心には確かな優越感が存在していた。
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