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誰も居ないはずの教会にひとつの影が写し出される。
影の主は、愉快そうに石段の上に腰を掛けて腕を回していた。
「本当に、肩凝ってしょうがないねぇ」
他には誰もいないように見えるが
奴は明らかに壁に話しかけている。
正確に言えば壁に描かれている地獄絵に話をかけていた。
勿論返答など来るはずないのだが…
「君もそうおもうかい?」
フフ
と笑い、笑顔を向けた。
「意見が合うのは珍しいね。」
まるで仲のよい友達に話しかけているかのようだ。
「今日の出来はどうだった?」
艶のある怪しい笑みを壁に向けて数秒、今度は肩をワザトらしくすくませて見せる。
「そう?このくらい自由にやったっていいだろう。」
そして笑顔が一瞬にして消え失せ、禍々しい欲望に駆られた瞳を揺らした。
「本当は血以外にも腕丸々一本頂きたい所だったんだ。」
「……我慢した私を誉めてくれよ………。」
今日は雲が綺麗に月の横に添えられている満月の夜だった。
「ククク。
全く、君は変わらないね。
景色は―――――900年前とは大分変わったけど…
そんな大したもんだいじゃないね。安心したよ。」
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