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まだ彫刻を見下ろしているサイは
誰にも気づかれないくらい、本当に少しだけ唇の端を上げた。
「…。」
数秒眺めたあと、彼はしゃがんで彫刻の上に両手をかざした。
…………すると
まるで図ったかのように、今まで雲に隠れていた月が顔をだし
彫刻を、サイを照らした。
「やっと見つけた………。
おいで…―――。」
そう言うと同時に
薔薇は微かに艶やかな輝きを持ち、溝に入り込んでいた赤い血が溶けて
サイの手のひらに吸収された。
するとサイの髪が風もないのに、わずかになびく。
――――とうとう起きてしまったんだね。――――
サイは立ち上がると何事も無かったかの様にその場から姿を消した。
、
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