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優菜が、また瞼を開くと
窓からの光は朝よりも色が濃く、影が伸びていた。
「…寝過ぎてしまった…。」
つくづく自分は自立していない人間だと感じさせる。
彼女はため息に似た呼吸をすると
頭をかきながら重い足取りでクローゼットまで行き、服を着替えた。
―お腹…空いた。夕飯。あ…明日のも買わなきゃ。
最近、仕事に没頭していたせいで家に、生活感が在るものは、殆ど置いていなかった。
冷蔵庫も飲み物くらいしか無かった。
やむ終えず、買いにいくしかない。
「嫌だな…。」
本当は行きたくなかった。
何故なら、忘れてはならない。
ここはイタリアで自分は日本人だということを。
イタリアはスリが多い。
何度危ない目に遭ったか。
危うく盗まれるところだった…というような危機一髪は珍しくない。
しかも容姿が日本人というだけでターゲットだ。
日本人=金がある
という危険な方程式が成り立ってしまうのだ。
一人で出歩くのは無謀すぎる。
しかし、ここでは仕事以外に付き合いは薄い。
買い物だけに付き合ってくれるような友人はいないのだ。
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