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夕方の広場は、怖い気持ちながらも
建物を照らすライトアップがきれいで見とれてしまう。
もうこの時間にやっているお店は限られている。
キラキラに光って回る広場内の小さめなメリーゴーランドを流し見し
早歩きで行きつけの店にいった。
~カラン
「こんばんわ」
巻き舌がなかなか出来なくて苦労している優菜には
イタリア語は難しかった。
ただ行きつけの店は
優菜が近所に住んでいる日本人だと知っているので
片言イタリア語でも気にせず対応してくれる。
「ユナ!久しぶり。最近忙しいの?」
レジの所で座って本を読んでいた40歳くらいの女性は
優菜に話しかけると
優しい笑みを浮かべて本を置いた。
「そうだね。結構忙しく働いてるかも。」
眉を下げて首をふった。
「あなた日本人だからって給料ぼったくられないように、気をつけなさいよ?」
女性は台に肘をついて顎を乗せて助言をする。
「出来るだけ気にしてるんだけどね。いい人達だから心配ないと思うよ。ありがとう」
優菜は口元に笑みを見せて棚に目を配りだした。
それを見て安堵の表情を浮かべながらまた本を開いて問いかける。
「それならいいけど…今日は何を買いたいの?」
「え、と…」
少し困ったように右手を頭に置く。
何しろ、この国では買うものを決めて店に行くのが普通なのだ。
だから咄嗟に何が欲しいのか言えない自分に申し訳無さを覚える。
「フフ、貴女達日本人て面白いわ。」
女店員は、本に目をおとしながら落ち着いた微笑みを浮かべた。
「ごめんなさい。まだ決めてないの。見てから決めていい?」
お願いすると、愛らしいウインクを店員はプレゼントしてくれた。
「勿論よ。」
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