130人が本棚に入れています
本棚に追加
無造作に立っている人影に男二人は振り向き首を傾げた。
「は?」
人影は優菜を挟んだリストの向かいに立っていた。
さっきまで誰もいなかったはずだ。
優菜は目をつぶって頭を思いきり振って固定されていた手をほどくと
その場に崩れた。
彼女は肩を痙攣させながら石畳に額をすりつけていた。
「なんだ?お前は知り合いか?」
「それ以上だよ………………」
言葉を発した瞬間
対象人物が消えた。
…スタ…ッ
「いけないよ?手をだしたら…」
気づくとリストの真後ろに立っていた。
リストは振り替えることもできずに目をキョロキョロさせた。
「な…なんだお前…」
答えずに人影はリストの頭頂点に左手、右肩に右手を置いた。
「リストさ…ん…。ヤバイッスよ!」
その言葉でリストも気付いた。
この男は殺す気だ…
ごくり、と息を飲んで冷や汗をダラダラと流す。
全く隙がない手だった。
頭と肩に手がおかれてる状態で、二人は完璧な死を覚悟する。
するとさっきまでうつ伏せに成っていた優菜が頭を徐に上げた。
静かになったので騒ぎが終わったのかと思ったのだろう。
優菜が顔をあげた瞬間
人影はさっきまでの殺気を嘘のようにしまい込み、置いていた手をパッと離してみせた。
「ひぁ…!」
間抜けな声を出して躓きながらも二人は、前傾姿勢で走っていった。
最初のコメントを投稿しよう!