与えられた蝋印

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「いつになったら終わるんだ?」 この場にいた誰もが思っていたが口にはしなかった言葉。 「ユナも思うでしょ?」 たまたまなのか、横に居た私に話が振られた。 全く、面倒くさい。 私も同じ「分類」と思われてしまいかねない。 彼女は発言者に振り向き肩をワザトらしく下げて反応した。 これは列記とした仕事なのだ。 今、私達はこの高貴な方が別荘として使っておられた屋敷の中の 家具や雑貨、残るもの全ての荷物を丁寧に慎重に運んでいる。 ただの引越屋とは違う。 お客様はよく言う貴族。 その建物から運ぶ、云わば選ばれたプロフェッショナル。 それが私達。 傷一つだって付けたら これから先の仕事に大きすぎる損傷を与える。 だから選ばれた私達は 黙々と集中して作業を行っていたのだ。
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