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『ユナ!これを持っていってくれ』
そう言って指示を出したのは
イタリアに配属となるきっかけとなった恩師
ヴェンハ・ダ―ンク
60歳くらいの灰色髪でスーツと白手袋が似合う人だ。
厳しいが、優しい人だ。
「はい!この本達を運びます」
任せてください。というように頷いて受け取る手に力を入れる。
するとヴェンハは新本の耳元で
「気をつけろ。ジャンは手が早いからな。」
と言い、ニヤリッと新本と目を合わせた。
それと同時くらいに指がツンっと傷んだ気がした。
思わず後ろを振り向き、ジャンを見た。
ジャンは先ほど話をかけてきた男だった。
「…はぁ。」
苦笑いでヴェンハに向き直り
再度しっかり本を抱えて立ち上がった。
「まだまだ仕事は残ってるからな」
ヴェンハはそう言うと屋敷の奥の方へ歩いていってしまった。
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