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「おじさん!?」
ロイが叫ぶ。
『勝手に俺の剣持だしやがって……後でじっくり話を聞いてやる』
再び脳裏に流れる音声。これも魔法なら、凄いことだ。ナナは思った。
この剣はおじさんの物と言っていた。確かに高度な魔法が使えるんだから納得。
ナナはそんなことを考えていた。
無論ロイには伝わらない凄みだが。
「ロイ!仲間なの?」
「仲間!あと10秒がんばるぞっ!」
10
走り込むのをやめ、後ろに数歩下がり背後の敵を蹴散らす。
9
囲まれないように場所を変え、立ち回る。
8、7
下がりながら回り込もうとするリザードに手を加えていく。
6、5、4
突撃してくるリザードの数が増えた。立ち回りをあきらめ、ロイも突撃する。
3、2
突然頭上に光の玉ができる。眩しくて直視できない。
突然の光にリザード達は動きをやめ、慌てている。
ナナも慌てていた。
「あの光は魔法の密度高すぎるよ!当てられたら私たちも死んじゃう!」
「やっぱり?」
1
「家の影とかは?」
「だめ、死んじゃうよ!」
ナナは疲れから咳き込む。
ロイがここまでがんばったのに。
ナナはそう思いながら目を閉じた。
「しゃーない、もう一仕事」
0
『上手くかわせよ。光り輝く殺意の閃光!シャイニングレイ!』
「呪文相殺(ディスペル)!」
光の球体が一瞬辺りをを真っ白に染まり、
ロイとナナを除く生命が蒸発した。
辺りが急に静かになる。大量の足音と、呻き声が支配していた空間は、朝方の村のような静かさに染まった。
ナナはゆっくりと目を開けて、リザードの有無を確認する。
自分とロイの状態を確認して、目を丸くする。
「……何で生きてるの?」
ロイはナナを下ろして、腰を下ろした。二人が目を合わせ、一緒になってため息をつく。安堵のため息。
「魔法使えない俺の得意技がこんな感じのなんだ。不思議な攻撃技だろ?」
『広場に来い』
それ以降二人の脳裏に言葉が流れ込んでくることはなかった。
「疲れたー水が欲しい…」
死線を乗り越えたロイの一言は軽く、ナナはそれを聞いて泣きながら笑った。
泣きすぎだと、ロイは思った。
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