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「違う!戦ったよ!勇敢に!もういいよ、出てってやる!」
「お、おいナナ?」
ロイはたじろいだ。
このままじゃナナの居場所が
そのロイの予感は的中する。
「そうかいそこまで言うなら出て行くといいさ。清々するね。邪魔者が消えてね」
「……っ!」
「あ、ナナ!まって!」
ロイはナナを追いかけて走る。
「事情はわからないけど、あんたら最低だ」
ロイは吐き捨てる言うと、村をでた。
アレンデは口を開けば、暴言ばかりが溢れ出そうになっていた。
なんとか我慢するので精一杯だった。
彼にも体裁があったし、事情をよく知らないで村の話に介入するのは良くないことを知っていた。
彼が止めてもこの場は何とかなるかもしれないが、根本的な問題が解決しない限りまた同じ事になる。彼が何度も経験してきたことであった。
「ナナ!待てって!」
ナナに追いつく。彼女は泣いていた。
「今日泣いてばっかりだな私……」
そう言うと、ポツリぽつりと話し始めた。
「私、今日襲ってきたリザード二匹は倒したんだ。村を守るために。皆が隠れても私が戦うの。今日だけじゃない。
何時魔物が襲ってきたときも私一人で追い返してきたわ。
そうしないと、親もいない私は食べ物をもらえないし。馬鹿にされる。
皆私がいなくなって困ればいいんだ。」
ロイにはその苦しさが少し伝わった。彼女もまた孤独だったんだなと。
「でもどうして、あそこまで村の人たちに言われたの?」
「言いたくない……言いたくないよぉ……!」
ナナはとうとう声を上げながら本格的に泣き始めた。
「……胸くらいなら貸してやるから」
そう言いながら小さい彼女を抱きしめる。
ロイはナナのこれからについて考え始めた。
このままじゃ行く宛も無いだろうし、村に戻っても親いないって言ってたから、生活厳しいだろうし。
おじさんに頼んでみようかな。
「事情は聞けたか?」
アレンデがやってきた。
「言いたくないって」
ロイが首を振るいながら言う。
「そうか、ひとまずお前を学園に連れて行く。ナナチルお嬢さんは家でかくまうか」
ナナが顔を上げる。
「村に戻りたくないだろ?行く宛はあるのか?」
「無いですけど……。でもいいんですか?」
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