87人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
アレンデが門を開く。
仕組みは簡単。人が何人もいても開かなさそうな門のほとんどは、魔力で開く。そう言う回路で作られている。
攻められたり緊急時にはこの回路を切断すれば開かない。
広い。
ロイとナナの第一印象だ。先ほどの村の何倍の広さがあり、人が集まり小さな国を作れるほど。
建物も多く建っているが、自然も多く美しさも兼ね備えている。
と、同時に不安もよぎる。
「なにこれ、歩くの?」
「当たり前だ、行くぞ」
これから毎日こんな広い場所を歩いて移動しないといけないと思ったロイは、うなだれながら、苦しそうに笑った。
「ナナ。俺がんばる」
「え?はい、頑張ってね」
ナナの濁りのない笑みがロイには何よりの動力源になった。
「ついたぞ」
「近っ!?」
「なに言ってるんだ。事務的な場所が入り口から遠くてどうするんだ」
「確かに」
ロイは唸った。
「ナナはここで待っててくれて。本来学園自体入っちゃ行けない場所なんだ」
「わかりました」
建物の入り口でおとしなく待つナナの姿がなぜか様になっているように、ロイには見えた。
「おっさんは何で入れるんだ?」
「職権乱用」
それはどうなんだと、思わざるを得ないナナだったが。ロイは納得していた。
扉の開く音を小さく響かせ、アレンデとロイは中に入っていく。
受付嬢にアレンデはと話しかけ、何かを聞いていた。
ロイはその間内装を観察していた。創立十年らしいが、そうと思えないほど綺麗な白い壁と床。
壁にふれると滑らかな肌触りが迎えてくれた。
きれいに整えられた置物や筆立て。
とにかく、真新しい感じがするな。
そう感じていると
「ロイウェル、行くぞー」
アレンデに呼ばれた。
「はいはい」
ロイはアレンデに続いて階段を上っていった。
最初のコメントを投稿しよう!