一日の長いこと

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「さて、と」 ロイは立ちあがり部屋を改めて観察する。 広い空間を二つに分ける仕切りがあり、どちらにも机、ベッドや棚などがおいてあった。 しきりのない部分には今食事をした丸テーブルと椅子が置いてある。 しきりは可動式で、外すこともできる。 「俺はこっちか……」 ロイが先に送っておいた荷物が片方の机の上に置いてあった。 早速整理しようと荷物に触れるが 「整理なら明日にしとき。もう寝ないと明日が辛いで」 「……そうするか」 ロイにその必要は別に無かったが、寝ることにした。 と、同時に騒音。 奇声が聴こえる 時刻に似合わない音量に二人は驚く。 続いて聞こえたのは爆発音。 外で何かあったと気づく。 「寝るのはもう少し後でいいや!」 「ずるいで!わいも行くわ!」 扉をこじ開ける勢いで、ドアノブを回しながら体当たり気味に開ける。 「あんたち、あんまり遅くなるんじゃないよー」 マーシスが次々に出て行く寮生に声をかけていた。 「マーシスおばさん、俺たちも行ってくるよ」 「はいよ。行ってらっしゃい」 大勢いる野次馬を押し退けて、騒ぎを目の当たりにする。 目にしたのは、高価そうなドレスをきた女の子が巨大な火球を両手にまとっている光景だった。 腰くらいまである赤茶色の髪の毛が炎に照らされている。 「ルシファー家の娘やないか」 「誰?」 「はぃ?知らへんの?誰でも知ってる有名なカレンジ・ルシファーの娘や。 経済力はもちろんのこと、実力もお墨付きで、今年首位で学園に入学したんやで」 「あのカレンジさんの娘か……」 ロイはカレンジ・ルシファーの名前は知っていた。しかも会ったことがある。 アレンデの補佐。聖なる審判者副総隊長なのだ。 「さて、そんな大物に喧嘩を売ったあほは誰や~?」 相手側を見やる。 すでにボロボロになった男三人が彼女の姿に震えていた。 「あの人たちは?」 「んー。貴族のぼんぼんや。たいして有名やないからあんまり知らへん」 「貴様ら、少し頭が冷えたか」 凛とした、威厳のある声がざわめいているその場に不思議と響いた。
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