一日の長いこと

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水柱が一瞬で消失した。 続けざまに殺到する炎もロイの手に触れた瞬間、爆散して手に触れていない部分までもが消失した。 「な、何がたいしたことない魔法や……!」 アルはほぼ一瞬で二つの魔法を、それもかなり強い魔法を打ち消したロイに舌を巻いた。 「ふー」 一息ついて、怖かったと誰にも聞こえないように呟いた後。少し考えた。 ロイは流れてくる冷や汗を拭き、すぐ後ろにいる男達に振り返り近づく。 死を感じて声もでなくなっていたそいつらはロイを凝視し、助かったという事実に気づくと急に強気になった。 「助かったぞ良くやった!褒美に金をくれてやる。あの生意気な女を捕まえてくれたら更に金をやる!」 それにロイは微笑みとげんこつ一発で返した。 ほかの男にも一撃を加え、次にカレンジの娘に近づいた。 「な、なんだ」 有無を言わせずロイは殴った。 「うそぉ!?なにしてんのやぁ!」 アルの盛大なつっこみといつの間にか戻ってきた野次馬達が絶叫する そんなことをいっさい気にしてないのか、痛がるカレンジの娘を男達の近くまで引っ張ると。 「喧嘩両成敗。あんたらやりすぎ。どっちも謝れ」 沈黙。言われた本人達は目を白黒させている。 少し間が空いて、カレンジの娘が息を吐きながら笑った。 「……やりすぎた、済まない。だが許した訳じゃない」 男達はそれを聞いて、怒鳴り散らした。 「ふざけんな!謝られて許すとでぐぁ!」 言い切る前に殴った。 「どっちも悪いんだから謝れ」 苦虫をかむような顔をしロイを睨みつけるが、目線を変えて言う。 「……悪かったよ。だがこの借りは絶対返すからな」 騒動が終わり、夜の闇が次第に明るくなってきた。 「げ……。もう朝じゃん」 「君」 「あー?もう眠いから話は明日にして欲しいんだけど」 「助かったぞ。怒りで我を失っていた。名前だけ教えてくれないか」 「ロイウェル。あんたは?」 朝日が見え始めた。 「ルル・ルシファーだ。お休みロイウェル」 ルルの髪の毛が照らされる。燃えるような赤色の髪が輝く。 振り向き、去って行く姿にロイは見とれた。 「……お休みルル」 小さくなって見えなくなった頃に、ロイはアルのところに戻った。
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