一日の長いこと

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「アル寝ようぜ」 「……ロイ。お前すごいやっちゃな」 「へ?」 「大したことない打ち消しやないやん、大したことあるわ。あんな魔法打ち消すなんてそうそういないわ」 「……」 ロイは周りを見回した。ロイを見ながら去っていく野次馬達。ほめ言葉と野次を次々に耳にする。 そう、今彼は最高に目立っている。 「しかもカレンジの娘を殴るなんてなぁ。考えられへんわ」 「アル、俺目立ちたくなかったんだが……」 「……多分今日の話題はこの騒ぎとロイの話で持ちきりになるやろうなぁ」 ロイは頭を抱え、うめき声を上げ始めた。アルはそんな姿を見て笑うしかなかった。 二人は寮の中へと帰って行った。好奇の目で見られながら。 部屋に入って、二人は椅子に腰を下ろした。 「ひとまず寝ようや。1時2時間寝るだけでも違ってくるで?」 そうだね、と言おうとしたロイは自分の袖の汚れを見て言いよどんだ。それから体を確認した。 所々リザードの体液がついて汚れてるし、汗で臭かった。 「いや、俺はシャワー浴びて荷物整理でもするよ」 寝ることをあきらめ、やることをやってしまおうという発言に、アルが驚愕した。 「寝ないで大丈夫なんか? たしかに汚れがひどいけど、睡眠とらんと授業やばいで?」 「体質で2日間くらいどんなに疲れても起き続けれるんだ」 「……冗談やろ?」 「真面目」 眠気は感じるが、我慢さえすれば起きてられないほどではないのだ。 ロイは異常な体力回復速度の持ち主なのだ。 もちろん睡眠をとった方が効率がいいのだが。 ロイはそのことをアルに伝えた。 「わいにはよーわからんが、目立ちたくないんやろ? あんまりそう言うのは言わん方がいいで」 「わかった有難う」 「とりあえずわいは寝るで。お休みロイ」 「お休みアル」
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