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「うまかったわ……朝でもきつくないさっぱりとしたトマトの甘みを損なわない味付け。感動や……」
「ご馳走様です。ロイ有難う!また食べにきていい?金払うからお願いです!」
皿を片付けながら、ロイは唸った。
「金はいらないと言いたいところだけど、材料費自腹だし。……そういや金って稼ぐの?いくらか支給されんのか?」
アルとユユは同時に吹き出した。
説明会の話にそう言ったことを話されていたのだが、何度も言うようにロイはでていないので知らないのだ。
アルは説明会の時ロイは寝ていたんじゃないかと思い始めるほどだ。
「支給はされますが、基本的に依頼で稼ぐんですよ」
「依頼?」
「話聞いてませんでしたの?戦闘、護衛、雑用と様々です。国からの依頼ですよ」
話を聞いたかと聞かれた時点でロイは目を逸らし、皿洗いに集中してるふりをした。
「死ぬことはあるのか?」
「そりゃあるわ。相手は魔物だったり盗賊だったりするかなぁ。同意書書いたやろ?」
戦闘死亡同意書
これに同意しないと入学できない。
そもそもこの学園の設立理由が国の戦力増強なので、正義の使者や聖なる審判者の部隊に入ってもらうための学び場なのだ。
「確かに書いた。じゃあ今日は依頼をやるのか?」
「……ロイもしかして説明会でてないんとちゃう?」
心臓がはねた。
「実はー具合が悪くてね……ここにくるのが遅れたのも同じ理由なんだ」
とっさに嘘をついた。まさか始業式を遅刻したなどとはいえないと思ったからだ。
「そうだったんや」
「それなら仕方ないですねー」
その時アルの目が光ったのをロイは見逃さなかった。ユユは何も疑ってない様子だが、アルは少しおかしいということに気づいた。
ロイはそのことを聞かれるのを恐怖して、手で小さくアルだけに見えるようにばつ印を作って、聞かないでと目で訴えた。
アルはそれに気づくと、わざとらしく手を叩いた。
「さぁて、実はわいはあんさんのこと知らへんのやけど。どちらさん?」
「あ、私はユユです」
アルは話を急に変えて、ユユと自己紹介をし始めた。
横目にロイを見ながら
後で教えろよ
と目で伝えた。
真意がわかったロイは小さくため息をついて、二人の自己紹介が終わるのを待った。
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