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王立アルディナ学園
本練
巨大な建築物だった。
貴重な鉄を魔力でより強度を引き上げた魔鋼を用いて作られた五階建ての建物。縦より横幅と奥行きがすごい長さになっている。
「こんなとこで数年学んでいくのか……」
「くーなんかわくわくしてきたで!はよ行こう」
「アル待ってください!私も行くです!」
はしゃぐ二人を見ながら落ち着いているロイは大人だった。
「ロイウェル」
凛と、耳に響いた。声の持ち主をみようとロイは振り向く。
「あれ、髪切ったの?」
「長いと邪魔だからな、昨日のうちに切ってしまった」
長い髪は肩に若干かかるくらいの長さに切りそろえられていた。
「えーとおはようルル」
「おはようロイウェル」
「ロイでいいよ」
「そうか」
ふっと小さく笑む。気品のある微笑みだ。
「ロイ。グループに人は足りてるか」
「え?いや、まだ三人かな」
「そうか。私を入れてくれないか。そのもう二人に相談してくれた後でいい」
突然だった。いきなりものすごい人にグループになろうと言われ、流石のロイも焦った。
同時に何か裏があるのではないかと怪しく思った。
「ほかの貴族の方が仲間にはならないんですか?」
過去に苦い思い出があるロイは簡単にイエスとは言えなかった。
「嫌か?なら諦めるが」
「正直に言うと、ルルはいいけど、貴族があまり好きじゃない」
「奇遇だな。私もだ」
ロイはまた驚いた。貴族嫌いの貴族がいるもんだなと。
そもそもあのカレンジさんの娘だもんな
そう考えると妙に納得できた。
カレンジは、表では器用で気配りのできる優しい、アレンデより女性に人気があるのだが、素はとてもなんでも適当にやる人間だ。てきぱきとやる形式にはまった貴族が嫌いという人物だった。
逆にルルはなんで言葉がしっかりしてるのかロイには不思議だった。
「母親似か?」
つい口に出してしまい、ルルが反応する。
「母を知ってるのか」
「いやカレンジさんを知ってる。実はすごく適当な人ってことも」
「ほぉ、君はもしかしてアレンデのところにいる……」
ロイは無言で頷いた。
「君とはいい友になれそうだ。また後であおう」
最後まで気品あふれる感じを放ち続けたルルだった。
短い髪は揺れて輝きを放ちながらロイの前から消えていった。
「……今日は長くなるな」
胸の高鳴りを感じながら、ロイはアル達に追いつくべく小走りに後者の中へと入っていった。
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