87人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「……私獣人って理不尽で暴力的な野蛮な人って聞いてたけど、全然違いますね」
ユユが言う。
「見た目ほとんど同じなのになー」
その女性は靴を履いておらず、裸足だ。
その足は泥で黒くなり、見た目凄く丈夫そうだ。爪が地面に食い込むように生えていて、歩きやすいようになっている。
「……ほんとおもしろいなー」
獣人の話を詳しく聞きたいなと思ったロイとユユだが、その二人から少し距離をあけてアルが険しい顔をしていた。
「……あの獣人。いや、まさかな……」
「どうした、アル?」
「早く行こうです!」
「ああ、何でもあらへん。行きましょか」
集会所。
滅多にないが、全生徒が集まる必要が出来たときに使う広い場所。
1000人入ってもまだ少しゆとりがある。
ちなみに、アルディナ学園は四年生で、一学年およそ200人程度。
「広いです」
中にはすでに多くの新入生がいた。
すでにグループの勧誘を始めていたり、自己紹介を始めていたりした。
「グループってそんなに大事?」
何気なくロイが口開くと視線が一気にロイに殺到した。
そして開場がざわめき始める。
アルはロイに近づき、小さく耳打ちする。
「大事やでー。グループにはランクづけされて、そのランクが成績に関係するんやからな」
「うわーみんなロイを見てますです」
ざわめきが落ち着はじめると、3人に多くの人が殺到し、同時に質問の雨が降りかかった。
3人はもうグループなのかとか、こっちのグループに入らないかとか、実力はどうだとか。丁寧な言葉で話しかけられた。
貴族までもがロイを勧誘したがった。
止むことの無さそうな質問の雨だが、たった一言。ロイの言い放った言葉であたりが静まりかえった。
「あー俺ディスペル以外の魔法は使えないんだー」
「雑魚じゃん……」
「なんだ使えない」
敬語だった口調はいきなり素っ気なくなり、火照った熱は一気に冷めた。
「なんやと……?」
今に怒り出しそうなアルに気づいたロイはそれを止める。
「気にすんな。相手にしたらきりがないぜ」
周りが見えてないアルは気づかなかったが、ユユは気づいた。
(なんでそんな恐いような悲しいような顔をしてるんですか、ロイ……)
最初のコメントを投稿しよう!