一日の長いこと

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パンフレットを頼りに広い校舎を右に左に曲がりながら目的の場所、総合体術の実習室前にたどり着いた。 だが、ルルは見つからない。それどころかこのあたり人が少なすぎる。 「なんだ見学かぁ?」 「うわ!」 突然背後から声をかけられたロイは素早く後ろを振り向きながら距離をあけた。 「……誰だ?」 「おいおい教師に向かって誰だはねーだろーよ」 やる気のない低音。 「さっきのスピーチの人か」 身長が高く、筋肉が程良くついた男がそこに立っていた。 顔に覇気はなく、眠そうに目をこすっていた。 「んなのはいい。んで見学か?」 ロイは一度うなずく。すると男は非常に嫌な顔をした。さらに、ため息をつきめんどくさそうにロイを見た。 「魔術学園なんだ魔術習えよ、たく」 教師ならぬ発言。 「名前は?」 「ロイウェルです」 「俺はガルシアだ。好きに呼べ」 そう言いながらロイに一枚の紙を渡した。 「書くとこかいて提出すればカリキュラム受けれるから。じゃ」 ガルシアはそのまま去ろうとするが、ロイがそうはさせなかった。 「ガルシア先生、ちょっと待って。見学は?」 気怠そうにロイを見ると、これまた嫌そうに答えた 「辞めたいときはデメリットなしで辞めさせてやる、気に入らないならくる必要ない」 「何をやるか話くらい聞かせて貰ってもいいじゃないですか」 ガルシアの気だるさに負けないようにロイは声に怒気を含ませて言う。 「こんな感じだよ」 静かに言い放たれた言葉とともにロイを憎悪のこもった瞳で睨みつけた。 いわゆる殺意の目線だ。普通の人が見れば、たちまち殺されてしまうという錯覚にとらわれるだろう。 しかし、ガルシア本人に殺意は無い。 (さっさとどっか行かないかなぁ) 本人はこんなことを思っているのだから、殺す気を感じる通りもない。見た目だけが殺す姿勢なのだ。
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