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しかし、ガルシアの予想に反してロイは逃げるどころか脅えもしない。
鈍感な奴か、めんどくさい
そう思ったところでロイが反応する
「なーんだ。はぁ」
ため息をついてとぼとぼ歩き去り始めたのだ。
流石にガルシアは驚いた。仮にも教師である自分が呆れられたのだ。
興味を無くしたように去っていくロイに別の不快感。ようするに見下されたような感じをガルシアは感じた。
「な……なにがなんだなんだ?」
「見せかけならいいよもう」
気付いてる
殺す気がないことに
尻の青さが抜けきらないまだ若いガキが。
ガルシアは自然に零れる笑みと一緒に目つきを穏やかにする。
「ああすまん。ちょっと適当に扱いすぎた」
見た目からはわからないほど、殺意を持った視線をロイに向けた。
これで気づかなければただの鈍感。
だがロイはそうではない。
「……!」
向けられた殺意に気づき、とっさにガルシアに振り向き直る。殺気の発生元がガルシアだとわかると笑顔でガルシアに告げる。
「気が変わった。やっぱりやるよ」
ロイは殺気など相手を牽制する目に見えない力を放てない。
体内エネルギーが操れないからだ。
体内エネルギーに起因する魔法に似た威圧の禍々しさが、いわゆる殺意や威圧を与える要素に該当する。
ようは威圧の強さがそのままその人の強さになり、殺気や威圧感を感じることのできるロイはそれを相手の強さの目安にしている。
ロイはガルシアが強いと判断した。
「そうか、楽しみにしているよロイウェル」
威圧感が消える。
先ほどとは違い瞳に小さく光が灯っていた。その奥に見える獰猛な意志に、ロイは底知れない何かを感じた。
ガルシアに先ほどの紙と日程表を受け取った。
「初回は三日後だ。その日は見学にするか?詳しい説明なら今してやるが」
ロイは数コンマ考えて口を開いた。
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