ミスティック・アタック

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少女は振り返った。 「お母さん……お父さん……」 トカゲは既に少女に鋭い牙をむけている。 終わった。 そう少女が思い目を閉じた矢先のことだった。 生暖かい液体が少女に浴びせられる。 自分の血だろうと感じると同時に、なら何で痛みがないのかと疑問が浮かぶ。 目を開けると、男が目の前にたっていた。手にしていた短剣を腰にしまうと、少女に小さく微笑みを浮かべる。 「大丈夫?リザードに追われるなんてついてないね」 と言った。青年という表現が一番似合っていて、風に揺れる黒髪が印象的だった。 男の背後では先ほど牙をむけていたリザードが倒れていた。 少女は遅れて助かった事を認識すると、涙を流して男に頼んだ。 「助けてください……!」 「……?」 男には謎の言葉だった。危険はもう迫ってない。なのに少女は助けを求めた。 思考を働かせる。 そもそもこんな小さい女の子がリザードのでる森に一人ではいるわけがない。なにか事情がある。 「よし、助ける」 「え……?」 意外だったのか、流れる涙を拭い、目を丸くして男を見た。 「俺はロイウェル。ロイって呼んで」 ロイは少女の前にかがんでさらに言う。 「乗りな。代金は君の名前を教えてくれるだけでいいよ」 笑顔を絶やさないロイに少女は、無理に笑顔を浮かべながらロイに背負ってもらった。 「私は、ナナチル」 「よし、ナナ。どっち行けばいい?」 ナナは村の方角を指差す。リザードの大群に襲われた自分の村の。 ロイはその指先を見て、走り出す。その速さはナナの比ではない。 ナナは助けが来た喜びを噛みしめていた。しかし、同時に後悔もし始めた。 今は一匹だけだから勝てたけど、もしかしたら複数には勝てないかも。 高位魔術師なら簡単かもしれないが、剣を主力とする一人なら無謀だ。 ナナはそんなことを考え始めた。 「ロイ?」 ロイ達は村までもう少しのところまで来ていた。 「ん?」 「ロイは強い魔術師なの?たくさんのトカゲに勝てるの?」 ロイは返答に困った。 村は多くのリザードに襲われていては、助けるのが困難だろう。 という事ではなく。 俺魔法使えないんだよね ということなんだが、言うわけにもいかなかった。
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