一日の長いこと

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「でもロイはどこに体を動かしにいったんですかね?」 「外やと思うが、こんな広大な学園の外を動かれると」 突然迫り来る足音に気を取られ、話を中断し足音のする方へ振り向くアル そんなアルの目の前をロイが駆け抜けた。 「ろっロイー!」 慌てて二人はロイを追いかけ始める。 ここは校舎内の廊下。昼ご飯を食べ終わった新入生がカリキュラムの見学をしたり、午後からカリキュカムを行う生徒であふれかえっていた。 「なに考えてるんですか!」 「知らへん、知らへんわー!待ってちゅうにロイー!」 人に激突。先輩にぶつかって喧嘩になるという二人の心配をわざと無視しているかのように、走る速度を上げて人混みにつっこんだ。 ユユも人混みに突撃しようとするが 「止まるんやユユ!ここでわいらがぶつかって話をこじらせても意味があらへん!」 アルが足をかけ、盛大に転んで一度前回りをした。 ユユはうつ伏せの状態から痛む箇所をさすりつつらゆっくりと起きあがる。 「痛いです!バカですか!レディは優しく扱うです!」 起きあがると同時に罵倒をアルに投げつけるが、アルは意に介さずロイが走り抜けて行った方を見ながら呆けた顔をしていた。 「ユユ、ロイがもう見えへん」 「そうですか、もう謝罪もなしなんて酷いです」 と返事をしてからユユは今の会話におかしな点があったことに気づく。 「……もうですか?」 人混みを見る、ロイは確かにいない。まっすぐ延びる廊下にはロイが走った痕跡、ロイに対する文句の一つも聞こえない。 「……まぁええわ。後で本人に聞けばいいんや」 人混みから聞こえる自然な話し声は、2人には不自然に聞こえていた。 疑問を残しながら、その場を後にした。
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