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「もう決闘時間だぞ!」
ルル・ルシファーはご立腹だった。我慢というベールを脱ぎ捨て、怒りの言葉を次々と周りの人にぶちまけていた。
「ユユ」
「なんです?」
アルとユユは暴走してるルルを眺めながら会話をし始めた。
「ルル・ルシファー有名な貴族や」
「……知ってますです」
「もっとな、わいはもっとおとしなやかな女性を想像しとったわけや」
と、言ってから目を細めてルルを眺める。
「わいの勘違いやったんやなぁ」
「想像と現実は魔法のようにうまくできてないですよ」
「ふん?あの男は逃げ出したか」
様子を見に来たジェナミカは嫌みをたっぷり含めてルルに言った。
「く、ロイウェルは……」
ルルはなんとか弁明しようとした。
しかし、続きを言い出せなかった。
あの時、私の魔法に恐れも抱かず打ち消しに出たロイウェル。
勇気を出したと言うより、あれは余裕だと思ったからじゃないか?
今日の素振りは最初から逃げ出すつもりだったからでは?
なにも言えなくなり、ルルはただ悔しさに顔を歪ませながら俯くだけだった。
「まぁいい。奴には一応助けてもらった借りがある。見逃してやるさ。
代理は急いで作れよ。時間を遅めたりなんてしないからな」
そう言い残すと笑い声と共に去っていった。
ジェナミカは解っているのだ。ルルに味方しようとする人がいないことを。自分を敵に回したがる馬鹿はいないことを。
そんな中終始徹底して見ていたアルとユユは、ロイがくると信じていた。
「走って追ったからなぁ」
「そうですねー。ルルさんに伝えな」
「止めとき止めとき」
ユユを止めて、アルは何かに指を指した。ユユは不思議に思いながらその指を指された方向を見ると、
「負けない、負けない、負けない……」
念仏のように負けないと繰り返しつぶやきながら、溢れんばかりに魔力を体の中にため込んでいた
「触らぬ神に祟りなしや」
「何です?」
「和の国のことわざっちゅーやつや」
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