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セゼブラスの手のひらから紫色の宝石のような、輝く石が姿を現した。
彼はずっとそれを握っていたようだ。
「それはっ」
ルルがそれが何かに気づき、慌て始める。無論ロイにはわからない。ただ、それが何らかの力を持つ石だということには気が付いた。
「これは不味いんじゃないか?」
ロイの予感は的中する。
セゼブラスが一枚の紙をポケットから取り出し、それに魔力を込める。
水龍降臨。
それもルルの作る炎龍とまったく姿かたちは同じ。
だが、そこにいるのはその大きさはルルの作った炎の龍より一回り大きい水の龍だった。
「馬鹿な!私があれをどれだけ苦労して……」
事実、天才と思われるルルも努力無しにあの炎龍を使えるようになったわけじゃない。
「紫色魔石か……くそ、金に物を言わせるとは、とんだ腰抜けだな」
負け惜しみとばかりに大声を張り上げるルル。
「何とでも言うといいさ。結局は勝った奴が正しいのさ。さぁ、喰らえ!」
水龍がルル目指して突進してくる!
「何処まで私を馬鹿にすれば気が済むんだ……」
ルルは用意した二つ目と三つ目の策を同時に実行する。
片方は、本来ならカウンター技に使うための魔法だが、ほかに水龍を止める術を持たないルルにはもう手段を選んでる暇が無かった。
魔力を打ち消すには同量の魔力で。
確かにそのとおりだが、少し無からず自然の法則も当てはまることをルルは知っている。
かなり極小の差ではあるが、やはり同じ魔力を込めただけでは炎が水に勝つのは難しいのだ。
打ち勝つためには、
(いや、打ち勝ち、慢心になっている今をたたく)
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