決闘する……?

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ロイはその衝撃で地に転がる。 ロイが次に目を上げたときには、ルルが立ち上がり、そして、何かに恐怖したルルの姿が映った。 (なんだ?) ロイはすぐにセゼブラスに向き直る。 壊したはずの紫魔石(ハディア)が左腕に握られ、右手の手のひらには小さな水球が浮かんでいた。 ロイはそれがなんだかよくわからなかったが、ルルにはそれが感じ取れた。 (高密度な水球。あれは準備段階) なかなか鮮明にならない自分の頭を限界まで回転させ、次の手を考える。 「これが、君の熱線に劣らない、今の僕の最強魔法だ」 生み出されたのは津波。闘技場の舞台はドーム状に防壁が張られ、五人の魔法使いの強力な力により、観客に戦闘による魔法の影響が及ばないようにされている。雨などの自然物は通過してしまうが、魔法による水は通過しない。 今、そのドームいっぱいに水が満たされようとしていた。その水はセゼブラスと、アッシを避けるように蠢き、ルルとロイを飲み込もうと襲い掛かる。 「私のインフェルノを越える、威力と範囲を極限まで極めたタイプの魔法か……」 ルルは呟く。スピードは無い。とはいっても人間が走るよりも速い速度で迫ってくる。今は吹き上げるように上空へと勢いをつけている。ルルたちを襲うまで残り10秒そこらだろう。 魔法合戦になった時点でルルに勝ち目は無かった。魔石はおそらくまだあるだろう。 セゼブラスとは、おそらく魔法を放つことに関しては天才だが、それにつりあわないほど自ら生み出せる魔力量が少ない人間だ。と、ルルは判断した。 (だから昨日勝てたんだ。これは私の慢心が生んだ負けだ。すまない、ロイ) ルルは諦めた。 『勝ち』を。
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