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「ロイウェル、私は決闘に負けた」
口を開くルル。
「何言ってんだ、こんな」
魔法、といいかけてやめた。見た目だけでかなり威力のありそうな魔法だった。これをあっけなく打ち消しでもしたら、簡単に自分が単なる体術推薦じゃないとばれてしまう事をロイは恐れた。
「私がどうにかする」
そういいながら懐から赤い石を取り出した。
「赤魔石(レディア)だ。これを使ってこれを相殺する。その後、私は力尽きるだろう。だから、せめて、奴には、セゼブラスには負けない。すまないな」
ロイは押し黙ってルルの話を聞いた。
(……負けるのか?俺は)
「いや、負けない。この際ばれてもいい」
負けだけは、絶対に。
と、ルルに聞こえないように呟いた。
「ルル、俺があれをどうにかするからセゼブラスをどうにかしてくれ」
「は?」
ルルは防御魔法発動を止める。
「絶対に止める。だから、勝つぞ」
揺るがない信念を持ってロイはルルの前に立つ。津波はもう直前まで迫っている。ロイは魔法剣を構える。上段から下段に振り下ろす構え。ロイは気持ちを落ち着かせ津波を見据える。
(……これ、剣壊れるけどいいかな)
「ミスティック・ケージ」
剣にひびが入る。魔力的な要素が崩壊したためだ。
「ディスペル!」
そのまま剣を振り下ろし、津波を切り裂いた。この方式は剣に乗せて、打ち消す力に指向性を持たせ、全域を消す技ではない。
津波は二人を避けるように分断されセゼブラスまでの道が開ける。
セゼブラスは再び起こった驚愕に次の手が打てずにいた。
何かを叫んでいる様子だが、その声は津波の轟音にかき消され、二人には届かない。
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