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「……一匹だけ。なんか違うのがいた」
「どんな?」
「剣持ってた」
「そいつだ」
リーダーが死んだと群に伝わると、自分たちも殺されると理解し逃げ去っていく。少なくともリザードの群はそれに当たる。
「よし、目標はできた」
ロイはナナを下ろした。そして聞いた。
「待ってる?」
「……え?」
ナナにしてみれば、それは意味の分からない質問だった。
「ここにいてもいいけど、きてもいけるぜ」
「……待っ」
てる。
そう答えそうになっていいとどまった。ロイの質問の意味をよく考えるべきだ。
つまり、待ってたら安全だとは限らないと言いたいに違いない。
ロイが戦ってる最中狙われる可能性は?
今見えてるだけ以外にもリザードがいたら?
背後からやられる可能性は?
隠れている場所がばれてるなら急がなければならない。そんなとき自分が危険に晒されたら?
ロイにとってどちらが邪魔になるか、ナナは考えざるを得なかった。十歳のその体と心ではそれ難題だった。
「俺は背負いながらでも余裕だ。安心してくれていい」
その一言をナナは信じた。
「連れて行って!」
力強い返事だった。
にやりとロイは笑みを浮かべると、上着を脱いだ。シャツ一枚の姿になる。ナナを背負い、上着を巻いてしっかりと固定する。
「多分辛いよ」
ロイは忠告する。ロイの予想が正しければ、村の周りにも20近くいる。
待ってると言われればそれなりの戦い方にしたが、それはほぼ全部を相手にしなければならない。
着いてきてくれるなら、一気にせめてリーダー
を狩ればすむ。
しかし、それはロイの戦闘での衝撃をナナも受けることになる。
ロイは楽でも、ナナには辛いかもしれない。
「余裕、よ。行こう。ロイ」
ナナは笑った。恐怖で顔をひきつらせながらも。
帰ってきた返事にロイは少し驚きながら、笑う。
リザードは人間の隠れているところが分かったらしく、赤い屋根の家に集中し始めた。
「いい度胸だ!時間もないみたいだし行くぞ!」
ロイは短剣を引き抜きながら、走り出した!
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