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~昨日~
「なっ、獣人か」
「……ルル・ルシファー。上流貴族だっけ」
「あ、そ、そうだ。だが、気にしないでくれ」
「……ウィルスシキンス。短く呼んでくれていいよ」
「そう、か。ウィルスシキンスだな。私もルルと名前で呼んでくれ」
「そう」
「ウィルスシキンスは、体術で入ったのか? 獣人と会うのは実は初めてでな、体術に優れた部族と聞く」
「そうだけど、短く呼んでいいよルシファーさん」
「なら、私もルルと呼んでくれ」
「ルシファーさん」
「ウィルスシキンス」
……。
……。
「冷たい空気が流れたのは一瞬でしたです」
「もともとルルは一般人みたいやからな。それに、相性も良かったんやろ」
「くっそ、絶対短く呼ばせてやる。それじゃね!」
「待てウィルスシキンス! 私もいつか名前で呼ばせてやるからな! アル、ユユ! 私は学科探しに行く。また会おう!」
シキはまるで風の如く去っていった。ルルは魔法学科へ行くと言っていたが、その道はシキが通っていったので、あえて遠回りになる道を選び、歩いていった。昨日の嵐の前の静けさはなんだったのかとアルは朗らかに笑った。訪れた嵐が沈黙ではなく、騒がしいもので本当に良かったと思った。それは、ユユも同じだ。
「……な?」
「似たもの同士です」
しかし、ここまで息が合うと恐ろしいなと、二人は目を合わせて肩で息を吐いた。
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