ミスティック・アタック

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「無理?」 ロイは絶望的状況でも笑う。 「そう言われると燃えてくるな。振り落とされるなよ?」 上着をもう一度きつく縛り直し、ナナをしっかりと固定する。 ナナにはその手が震えているのが見て取れた。 ナナはもう恐怖より、ロイが死んでしまうことの方が気になっていた。 「勝てるの?」 ナナは心配そうな顔で聞く。 「もちろん。さぁこいっ!蹴散らしてやる!」 ロイの怒声に反応してか、リザードが突撃してくる。四方八方からの突撃で逃げ場がない。 多少の知識はあっても、戦術までは立てられないリザードは突撃しかしない。 呑まれたら、危ない。 それを知っているロイはリーダーに近いの敵に向かって走り出す。 それに驚いたのか、狙われたリザードは速度を落とし、なにもできずに切られた。 ロイはそこからあえて群の中に飛び込む。 走りを緩めず、切りながら走る。少しでも止まれば、背中にいるナナが危ない。 群の中で強いって言ったって、それでもリザードは苦戦する敵じゃない。 「くそ!遠い!」 数が問題だ。このままでは体力がつきてしまう。しかもリーダーは二匹、それぞれ反対側にいる。 やっぱり無理なのか? ロイにそんな言葉がよぎる。 無意識に考えた自分に気づき、ロイは笑う。 ナナをちらと見て。 「無理じゃないぜ!」 叫ぶ。 今にも様々な圧力に潰されそうになっていたナナは、涙目になりながら一瞬呆気にとられながらも叫ぶ。 「無理じゃない!がんばれ!」 ロイは剣を大きく振るい三匹を斬り伏せたところでリーダーにたどり着く。 「おらぁ!」 たどり着けると思わなかったのか、油断をしていたリザードは剣を振るうことなく。動かなくなった。 「遠いな!」 汗まみれになりながらロイは叫ぶ。今きた二倍の距離走りながら戦わないといけない。 「もう少し、付き合ってくれな……」 「ロイウェル……」 足が重い。腕がだるい。ロイは震える体に鞭を打って走り出す。 満身創痍。ナナにはロイがいつ倒れてもおかしくないことに気づいていた。 「勝には……どうすれば勝てるの?」 ナナがつぶやく。 そして 『そうだな、あと10秒ぐらい頑張れたら勝たせてやるよ』 突然二人の脳裏に言葉が浮かんだ。
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