393人が本棚に入れています
本棚に追加
幸村は静かに言った。
「美音…そなたはここに残れ」
「!!」
まさか置いて行かれるとは夢にも思っていなかった美音は、一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「なん、で…」
「危険だからだ」
「危険なんて…今までだって…!!」
「今回は違う!!」
幸村の怒鳴り声にビクリと肩を震わす美音。
「美音…相手はあの豊臣だ。己の欲望のために力を欲している者だ。美音が行ってどうにか出来る相手では…」
「出来るよ」
小さな声で、しかし、稟として美音は言った。
「囮のための時間なら…私が稼ぐ。私が豊臣の陣に行って、秀吉さんと話をする。上手く説得出来たら…戦をしなくて済むかもしれない。同盟にだって…」
「ならん!!そのような危険なこと…!!」
「だ、旦那、落ち着いて…もっと冷静に…」
佐助が止めに入るも幸村は止まらない。
頑として行かせる気のない幸村。
自分の思いをわかってほしい美音。
「とにかく、此度の戦には絶対行かせぬ!!」
「幸村…」
とうとう美音の目から大粒の涙が溢れる。
その涙に鴉が動いた。
「…幸村様、無礼をお許しください」
そう言うが否や幸村の頬をひっぱたいた。
幸村だけではなく、その場にいたもの全員が唖然とした表情を浮かべている。
鴉は幸村の前に膝魔付き、頭を垂れた。
最初のコメントを投稿しよう!