~小田原戦~

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幸村は静かに言った。 「美音…そなたはここに残れ」 「!!」 まさか置いて行かれるとは夢にも思っていなかった美音は、一瞬、何を言われたのかわからなかった。 「なん、で…」 「危険だからだ」 「危険なんて…今までだって…!!」 「今回は違う!!」 幸村の怒鳴り声にビクリと肩を震わす美音。 「美音…相手はあの豊臣だ。己の欲望のために力を欲している者だ。美音が行ってどうにか出来る相手では…」 「出来るよ」 小さな声で、しかし、稟として美音は言った。 「囮のための時間なら…私が稼ぐ。私が豊臣の陣に行って、秀吉さんと話をする。上手く説得出来たら…戦をしなくて済むかもしれない。同盟にだって…」 「ならん!!そのような危険なこと…!!」 「だ、旦那、落ち着いて…もっと冷静に…」 佐助が止めに入るも幸村は止まらない。 頑として行かせる気のない幸村。 自分の思いをわかってほしい美音。 「とにかく、此度の戦には絶対行かせぬ!!」 「幸村…」 とうとう美音の目から大粒の涙が溢れる。 その涙に鴉が動いた。 「…幸村様、無礼をお許しください」 そう言うが否や幸村の頬をひっぱたいた。 幸村だけではなく、その場にいたもの全員が唖然とした表情を浮かべている。 鴉は幸村の前に膝魔付き、頭を垂れた。
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