第一章

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「………は?」 蘭はきょとんとした顔で聞き返すと樹に詰め寄った。 「お前なに言ってんだよ?」 蘭が肩を強く掴むと、樹は少し顔を歪めただけで、表情に大きな変化はない。 ただ、じっと蘭を見つめていた。 「どうしたんだって…。 ハルが死んだんだよ。あたしの誕生日プレゼントを持ってくる途中。トラックと壁に挟まれて即死だったんだって」 淡々と話す樹に恐怖を感じながらも蘭は冷静になるよう心を落ち着け、さらに質問を重ねた。 「病院から連絡が?」 「ううん。ゴリラからメールが来てて朝早くにまた電話が来たの。死体はもう原形を留めてなかったけど学生証持ってたみたい」 樹はそういって携帯を差し出した。 画面には 『五十嵐が事故を起こした。すぐに連絡くれ。』 の文字。 携帯を見つめたまま停止した蘭を冷めた瞳で眺め、 しばらく時間を置くと 樹は静かに口を開いた。 「あたしはどうしたらいい?」
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