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「“あたしはこれからどうやって生きていったらいい?”
樹は確かにそう言ってました。
俺が何より怖いのは樹の感情がなくなっちまったような気がすること。
泣きもしないし、ただ“無”って感じで…」
必死に話す蘭を見つめ、
女は静かに頷いた。
「このままでは自殺行為をしかねないわね。注意して彼女を見守る必要がある。」
「自殺…」
「えぇ。彼女のご家族とは連絡が取れないの?」
蘭は少し考え、
「はい。ずっとハルと暮らしていたので家族とは…
妹さんはたまにライブに来てましたけど話したりはしてなかったです」
「どうにかして樹さんのご家族と接触出来ないかしら」
「出来るだけやってみます」
そう言って
蘭が立ち上がると
女もすぐに立ち上がり、
微笑んだ。
「精神科の先生達はとても熱心に患者さんと向き合ってくれるから樹さんもきっと大丈夫よ。
一応担当は私になる予定だから受け付けで呼び出してね。」
「ありがとうございます麻樹先生。」
蘭がそう言うと
麻樹は目を見開き
「やーだっ。麻樹先生だなんて!!
皆麻樹ちゃん、だとか麻樹って呼ぶのよ。
先生なんて堅っくるしい呼び方しなくていいんだから!!」
と思いっきり蘭の背中を叩いた。
蘭は叫び声を上げそうになりながらもう一度礼を言って診察室を後にした。
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