目覚める戦士

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――永田町 「総理一言を! どうなってるんですか! 現状を!」 「外国のテロ行為との噂を聞いているのですが……!」  都会である東京は、大日本帝国軍による被害も比較的少ない。しかしあれだけの大惨事は瞬く間にマスコミを通して全国、そして世界に知れ渡り、官邸の外は多くの報道陣により埋め尽くされていた。  黒塗りの車が3台、官邸の玄関に止まり、真ん中の車から政治を担う《矢部 秋彦》総理が降りる。その瞬間、視界が真っ白になる程のフラッシュが集れ、矢部は顔に手を翳してしまう。 「今こちらで調査中だ! どけ! どけ!」  矢部は側近達に守られながらマスコミ達によるフラッシュの洗礼の中を通り過ぎ、官邸へと入っていく。  入るや否や、待ちかまえていた初老の中堅の議員2人がB4程の大きさ資料を束ねて矢部に駆け寄る。 「飯岡と山垣か……!」 「被害が多い地域は千葉や新潟、そして石川。死傷者は未だに……」 「……仕方ない。直ちに避難警告を発令して避難民を可能な限り全てここに集結させろ!」 「そんな! 国民を何処に寝泊まりさせる気ですか!」 「そんな事! ホテルでもマンションでも議員宿舎でも使え! これは命令だ! 一刻を争う時に四の五の言う必要はない!」  矢部にとってこれは苦渋の決断であった。日本国建国以来、各地に忍ぶ大日本帝国の志を持った者を探り続けていたのにも関わらず、今回のこの懺悔は、積もりに積もった帝国の長年による報復なのかもしれない。
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