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「美樹を泣かしてどういうつもり?人が勇気出して告ってんのに、この仕打ちは何なのよ?」
「ちょっと…春香!アンタ何言ってるの?」
「何言ってるのじゃないでしょ!美樹今日の朝、好きな人に告白するって言ってたじゃん!」
「言ったけど…加賀見じゃないから」
「へ!?」
思わず間抜けな声が出る。
目を大きく見開いて美樹を見つめたら、両手を腰に当てた美樹が上目遣いであたしを睨んできた。
「だ・か・ら!加賀美じゃないの!」
「え…じゃあ今何話して…て言うか何で美樹泣いてたの?」
「て言うかアタシ泣いてないし…コンタクトにゴミが入って取ってただけ。それに告白じゃなくて、今日の生徒会の事聞いてただけなんだけど」
「う、うそ……」
とんだ勘違いに気が遠くなる。
よくあるお馬鹿エピソードの典型的状況に、穴があったら入りたいとあたしが切実に思っていると。
「話は終わったのか?」
バリトンのゾクリとする低い声が後ろで響いて、あたしは背中にタラリと冷や汗が流れた。
いつもは甘く感じるその悩殺ボイスも、今日は違った意味の寒気さにブルッと身体が震える。
ひ、ひえ~こ、怖くて後ろ振向けないよ~。
「高坂…そっちの話は終わったようだな。今度は俺から話があるからこっちを見ろ」
「は、はい……」
ビクビクしながらあたしは身体を小さくしてクルリと振向き、加賀見の正面に向き合った。
ちらりと上目遣いで加賀見の顔を見ると、彼の左頬にはあたしの手形が赤々としっかり残っていた。
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