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クラス代表――――つまり二年生のクラスを編成する振り分け試験において、そのクラス内で誰よりも優秀な成績を収めた生徒ということになる。
更に言うなれば、学年で最高成績を誇るAクラスでのトップはそのまま二年生のトップということになる。注目を浴びるのは当然って言えば当然だろう。
「……霧島翔子です。よろしくお願いします」
そんな視線の中心にありながら顔色一つ変えずに淡々と名前を告げる霧島翔子。
その目はクラスメイト全員に向けられているようでありながら、よく見ると同性の級友達にのみ向けられているような気がした。ふーん……噂は本当みたいだな。
クラス代表となるような霧島翔子は一年生の時から有名人であり、その容姿の美しさも学年を問わず知れ渡り、男子生徒からの告白が絶えなかったとか。まぁ、一人として霧島翔子の心を動かした生徒はいないみたいだが。そのことから霧島翔子は同性愛者ではないかという噂がながれた――確かに火の無いところに煙は立たないからな。
「Aクラスの皆さん。これから一年間、霧島さんを代表にして協力し合い、研鑽を重ねてください。これから始まる『戦争』で、どこにも負けないように」
高橋女史の結びの言葉が告げられ、霧島翔子が会釈をして席に戻る。
横にいた明久は中を見ることを止めていた。……そう言えば、俺も早くFクラスに向かわないとな。
俺は明久の後ろを走らない程度にしてついていった。
☆
二年F組と書かれたプレートのある教室の前で明久は何故か躊躇していた。
明久は単純だ。何を考えてるかなんてすぐ分かる。
どーせ遅刻なんてしてきて、皆に悪い印象を持たれたりしないだろうかなんて考えてんだろ。
確かに嫌なヤツや変なヤツがいないかは俺も心配だったりする。
今後一年間を共に過ごす仲間達がどんな奴等なのか、少しの不安がある。
「なんて、考えすぎかな」
何を考えていたのかはよく分からないが、いつの間にか明久は明るい表情になっていた。
明久一人で何度も頷いてからドアに手をかけた。そして勢いよくドアを開けてから中の皆にできる限り愛嬌たっぷりに明久は言い放った。
「すいません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れ、このウジ虫野郎」
台無しだな。
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